毎年やってくる熱中症のシーズン。近年では、急激に暑さが増してきたりして、体温調整が追いつかないことも多い。スポーツではもちろんのこと、仕事、外出、さらに室内でも、何をしてる時でも熱中症になるリスクがあります。
そして、年齢別でみても老若男女を問わず熱中症で救急搬送されてるのが現状。「自分は大丈夫」という油断が、思わぬ事態をまねくことに繋がります。つまり、熱中症に関する知識と対策はどの年代の人も必要なのです。
そこで今回は、熱中症のメカニズムや症状など熱中症に対する基礎知識を全て解説していきます。
しっかり熱中症に対する知識を身に付けていきましょう。
熱中症の具体的な予防策については、別の記事の「予防のための具体的対策と水分補給の目安」で詳しく解説していますので、こちらもあわせてお読みください。
それでは、早速解説していきます。
熱中症とは?
人はもともと、環境に対して体の体温を調節できるような機能を備えています。
体温が上がりすぎれば、自律神経の働きにより血管が拡張し、皮膚に多くの血液が流れ込んで皮膚が赤くなります。
これにより、熱を体の外に逃がして体温を下げるのです。
しかし、様々な要因によりこの体温調節が乱れると、体に異変が起きます。
これを総称して「熱中症」と呼びます。
その要因とは、以下のとおり。
発汗
気温が高くなって暑くなると、汗をかいたりもしますよね?
これも、体温調節には大事なことです。
汗をかくことによって、汗が皮膚の表面から蒸発する時に熱も一緒に運んでくれます。
これにより、体の体温を下げて調整しているのです。
つまり、汗をかきにくくなると体温が下がりにくくなり、体内に熱がこもりやすくなるのです。
高温・高湿度
高温や高湿度の環境にいたり、そこで運動などをして急激に体温が上がると体温調節がうまくできないことがあります。
高温の場合は、外気温が高いため物理的に体温が高くなりやすくなります。
高湿度の場合は、ジメジメした環境により思うように汗を出すことができなくなり、熱を外に逃がしにくくなります。
そのため、高湿度環境ではそこまで気温が高くなくても、体温を下げることができず体に熱がこもってしまうこともあります。
脱水
基本的に、汗をかいたりすると体内の水分がどんどん減っていくため、夏場は脱水になりやすい。
人間の体はの約60%は水分で出来ていると言われています。
そのため、汗をかき、体水分が減っているのに補給が遅れることで、体内での体温調節機能がうまく働かなくなります。
この結果、体温を下げることができず体調不良を起こしてしまいます。
このように、高温・高湿度・脱水などの要因により、体の体温調節機能が低下することにより熱中症は起こります。特に高齢者などは熱中症になりやすい傾向にあるが、若い人や健康な人でも熱中症のリスクはあるので、油断しないように気を付けましょう。
熱中症のメカニズム
熱中症といっても、軽度~重症までいくつかの症状に分類されます。
それは以下のとおり。
- 熱失神
- 熱疲労
- 熱けいれん
- 熱射病
この分類にも、それぞれメカニズムと症状が異なります。
ひとつずつ解説していきます。
熱失神(Ⅰ度)
人の体は、常に熱を放出して体温を一定(36~37°)に保っています。
日常動作や運動をすると体温が上昇し、体を動かさなくても高温環境では体温が上昇しやすくなる。
体温が上がると、熱を逃がすため体の表面への血流が増えるので、全身の血流量も増えます。
これにより、一時的に血液が足りなくなって、低血圧や脳の酸欠状態を起こす。
これを熱失神という。
1.めまい
2.立ちくらみ
3.失神
熱疲労(Ⅱ度)
体温が上昇したら、汗をかいて熱を放出して体温を下げようとします。
そうすると、発汗により体内の水分が減っていき、水分補給をしないと脱水状態になる。
この脱水状態が長時間続くことにより、倦怠感・頭痛・吐き気などが起きる。
これを熱疲労という。
1.全身倦怠感
2.頭痛
3.吐き気・嘔吐
熱けいれん(Ⅱ度)
汗をかいて蒸発すると、体温を下げることができます。
その汗の中には電解質が含まれており、汗をかくと水分だけでなく電解質も失います。
最も失いやすい電解質はナトリウム(Na)で、つまり塩分のことです。
そのため、汗をかいて水分だけを摂取していると、体内の塩分不足になります。
塩分は、筋肉を動かすために必要なため、塩分不足になると筋肉がけいれんを起こします。
これを熱けいれんという。
1.筋肉がつる
2.手足の運動障害
3.動くと体がガクガクする
熱射病(Ⅲ度)
体温調節機能が追いつかなくなると、体がさらに高温になってきます。
それにより、脳に影響が出てきたり、意識がもうろうとして倒れてしまうこともあります。
これを熱射病という。
この状態になると、体が非常に危険な状態になります。
1.意識障害
2.体温が高温
【現場での対応】
現場で熱中症の人に直面した場合は、どの分類か?なんて正直関係ありません。速やかに涼しいとこに移動して横に寝かせ、水分補給させ、救急車を呼びましょう。水分補給が困難な場合は無理に行わないようにしましょう。焦らず落ち着いて対応することが大切です。
【救急車を呼ぶかの判断】
見守り:めまい、立ちくらみ、大量の汗、こむら返りなどの症状で「意識障害がない」
救急搬送:頭痛・嘔吐・倦怠感などの症状がある、または「意識障害がある」
※見守り判断でも、症状に改善が見られない場合や水分補給が自らできない場合などは、医療機関へ搬送しましょう。
熱中症になりやすい時期
熱中症は6月~9月の時期まで要注意。
熱中症患者の数としては、やはり夏本場の8月が一番多い傾向にある。
令和2年の消防庁の「熱中症による救急搬送状況」の資料も添付しておきます。
しかし、6月や7月も注意が必要である。
特に6月の夏前は一番油断しやすい時期であり、気温は高温にも関わらずまだ夏ではないので、気持ちの油断から水分補給が遅れがちになる。
そして、6~7月はまだ夏の暑さに慣れていないのと、梅雨の湿度によって体温調節がうまく働かず、体温が下がらなくて熱中症になってしまうことも多い。
なので、8月の一番暑い時期はもちろんのこと、夏前の時期にも油断しないよう十分気を付け、早めの準備と対策をしていきましょう。
外出や運動時には注意しよう
外出時や運動時に、熱中症対策として気を付けておきたいのが、気温・湿度・輻射(放射)熱です。
この熱中症の原因となる要素を考慮して表した暑さ指数を「WBGT:湿球黒球温度」といいます。
詳しい計算方法や測定方法などは、厚労省の「WBGTの活用について」を参照ください。
そして、このWBGTと気温を基準として、日常生活時と運動時の熱中症警戒レベルを表わした指針があります。
日常生活での指針
気 温 | WBGT | 熱中症リスク |
---|---|---|
35°以上 | 31°以上 | 全ての活動で高リスク |
31°~35° | 28°~31° | 全ての活動で高リスク |
28°~31° | 25°~28° | 中等度の活動で危険 |
28°未満 | 25°未満 | 高強度の活動で危険 |
運動時での指針
気 温 | WBGT | 活動指針 |
---|---|---|
35°以上 | 31°以上 | 運動は原則中止 |
31°~35° | 28°~31° | 激しい運動は中止 |
28°~31° | 25°~28° | 30分おきに休息 |
24°~28° | 21°~25° | 注意しながら運動 |
24°未満 | 21°未満 | 運動しても安全 |
[ 参考:WBGT(暑さ指数)および気温に注意(大塚製薬HP) ]
このように、日常生活と運動では警戒レベルが少し異なるが、いずれにしても高温環境のときは厳重注意が必要である。
そして、なるべく涼しい環境、こまめな水分補給、適度な休息をとることを心掛けることが、熱中症対策として重要になってきます。
熱中症に特に注意したい人
高齢者は特に注意
熱中症に特に注意したい人は「高齢者」です。
その理由として、高齢者は体内に水分を蓄える機能の低下や、ノドの渇きを感じる機能などが低下しているから。
そのため、水分補給が遅れて、気付いた頃には脱水になっていることが多い。
また、水分を摂りすぎるとトイレが近くなるのが嫌で水分補給をしなかったり、自宅で冷房入れると体が冷えて関節が痛くなるから、という理由でつけなかったりする人も多い。
こうなると、やはり体内の熱をうまく逃がせずに、屋内でも屋外でも熱中症のリスクが高くなる。
こんな人も注意
- 幼児:背が低く輻射熱を受けやすい
- 肥満:熱がこもりやすい
- 痩せ:水分の貯蔵庫である筋肉量が少ない
- ダイエット中:栄養不足になりがち
その他にも、仕事でも日常でも室内で過ごすことがほとんどで、外の暑さに慣れてない人も注意が必要です。
また、日頃の疲れがたまっていたり寝不足になっていると、体温調節が乱れやすく要注意です。
なので、暑さ対策以外にも、普段からの体調管理には気を付けて熱中症を予防しましょう。
上記の項目に該当しなくても、誰でも熱中症には注意しなくてはいけません。自分は大丈夫という油断が、思わぬ事態をまねきます。自己管理をしっかりして暑い時期を過ごしましょう。
さいごに
熱中症は予防できます。そのためには、熱中症に対する知識と準備が必要です。では、具体的な対策については、こちらの記事「予防のための具体的対策と水分補給の目安」で詳しく解説しています。
この記事を読むと、具体的な行動と職場での対策やマスク着用に関する対策などが学べます。一般の方向けに簡単に解説していますので、是非読んでいただき、しっかり予防のための対策をしていきましょう。
以上。
1.なぜ熱中症になるのか?
2.熱中症の症状とメカニズム
3.熱中症はどんな人がなりやすいのか?