【トレーナーが解説】1から学ぶウォーミングアップの目的と効果【初心者のための基礎知識】

こんにちは、みのっちくらぶです。今回は、「ウォーミングアップ(以下、アップ)の重要性」ということにフォーカスしてお話していきます。スポーツの世界ではもちろんのこと、他にも筋トレ時や、運動会、体育の授業前やラジオ体操なんかもその一種です。認知度としては広いが、実際に運動前に実施している人は多くない。なぜ、ウォーミングアップは必要なのかを解説していきます。

本記事のテーマ

1.アップの目的や重要性を理解しよう
2.アップによる効果や体への影響を理解しよう


では、早速本題に入っていきますね。

アップの目的を理解しよう【なぜ重要なのか?】

アップの目的

アップの目的は、ズバリ「体をスムーズに動かせるようになるため」です。
本練習や試合で体がスムーズに動くようにするために必要な準備運動です。
スムーズに体を動かせるようになることによって、「ケガの予防」と「パフォーマンスの向上」につながります。

筋肉は輪ゴムのような性質であり、伸びたり縮んだりします。
体を動かすということは、筋肉を伸ばしたり縮めたりしていることなのですが、どちらかというと「筋肉の伸び」の方が悪い感じです。
本来は、体を大きく動かせるほどパフォーマンスは上がりますが、筋肉の伸びが足りないから体を大きく動かすことができない。
だからパフォーマンスが出せない。発揮できない。

なので、その「筋肉の伸び」が高まるようにアップは行わなければなりません
そのために重要なのが「体を温める」ということです。
つまり、「体温を上げる」(Warm:温める、Up:上げる)です。
体温が上昇する→筋肉の伸びが高まる→体がスムーズかつ大きく動く→結果的にパフォーマンスが大きく発揮できる。だから筋トレなどの効果も高まるということです。

練習では上手くプレーできるのに、試合では自分の力を発揮できなかった。そんな選手は大半です。
本番で力を出せないのは、メンタル・周囲の環境・相手との相性、など様々な要因はありますが、アップ不足で力が出せないのは、ただの準備不足です。そして、急に激しい筋トレをして体を痛めてしまうのも危険かつ、筋トレ効果も低いので注意しておきましょう。

アップをすることによる身体的影響【効果】


アップを行うことにより、以下のような効果が現れます。

  1. 体温と筋温の上昇
  2. 心拍数の増加
  3. 柔軟性の増大
  4. 神経・筋伝達の促通

体温と筋温の上昇

体を動かすことにより、体から熱エネルギーが発生します。この熱エネルギーの発生により、体温と筋温が上昇する。実は体には、体温だけでなく、筋温(筋肉の温度)というのも存在します。

体温が上昇しただけでは、筋温までしっかり上がってるとは限りません。そのため、練習や試合に入る前は、その競技で主に使う部位の筋温を上昇させる必要があります。野球選手で例えるなら、ランニングやダッシュしただけで、投球に必要な肩が温まるか?投げれるようになるか?ということです。つまり、本練習や試合に入る前は必ず専門的な練習(野球だとキャッチボール)をして、競技で主に使用する部位の筋温を上昇させることが重要となります。

ストレッチなどによる柔軟性の向上の重要性については、「ストレッチングの効果(e-ヘルス)」を参考にしてみてください。

心拍数の増加

アップで体を動かすことによって、心拍数が増加します。
心拍数は、文字通り「心臓の拍動回数」です。つまり、ドクンッドクンッ、の回数です。
この心拍数が上がることで、全身を流れる血流量が増えます。
血流量が増えると体温と筋温が上昇するため、さらに全身が温かくなってきます
運動して体が温まると、手足が冷えてたのが温かくなったというのはこういうことですね。

柔軟性の増大【関節可動域の拡大】

心拍数が上がり、体温や筋温が上昇すると、筋肉の柔軟性が増加する。
筋肉の柔軟性が増加すると、体が大きく動かせるようになる(関節可動域の拡大)。
例えば、肩が上がりやすくなる、開脚がしやすくなる、足を大きく前に出せるようになる、など。
余談ですが、関節可動域の拡大には、その他にも腱や靭帯の伸張性とも関係しています。
この柔軟性の増大は、しっかりアップを行った選手ほど高く、スキルが高い選手ほどしっかり柔軟性を高めてからプレーに入る傾向にあります

神経・筋伝達の促進

アップを行うことによって、筋肉の伸び縮みの反応速度を高めることができる。
筋肉は脳から命令が下り、神経を介して筋肉を動かす。この神経の伝達速度が速いほど、筋肉の収縮も早くなり、結果的に体もより素早く動かすことができる。
イメージとしては、朝起きたばかりやリラックスして落ち着ている時などは、とっさの動きができないですよね。これは脳の興奮レベルが低いため、神経の伝達速度も遅いからです。
なので、これから練習や試合を行うという時は素早い動きが求められるため、しっかりアップを行い脳の興奮レベルを上げ、体を素早く動けるようにすることが重要である。


このように、アップをすることで上記のような身体的反応が出ることによって、結果的にスムーズに体が動くようになる。
そして、それが最終的にパフォーマンスの向上とケガの予防につながるというわけです。

ウォーミングアップの種類【方法】


ウォーミングアップにはいくつかの種類(方法)があり、競技や状況などに応じて選択する必要があります。

  1. パッシブ(他動的)ウォーミングアップ
  2. アクティブ(活動的)ウォーミングアップ
  3. 一般的ウォーミングアップ
  4. 専門的ウォーミングアップ
  5. スタティック(静的)ストレッチ
  6. ダイナミック(動的)ストレッチ
  7. バリスティックストレッチ

それぞれの方法には役割がありますが、特に重要なのが「アクティブウォーミングアップ」「専門的ウォーミングアップ」「バリスティックストレッチ」です。

アクティブウォーミングアップ

アクティブウォーミングアップは、簡単に説明すると"自分で体を動かして、自分で体を温める"ということです。当然といえば当然です。
外的な刺激によって体を温める方法は、表面的かつ短時間しか効果が得られないため、スポーツ選手のアップとしてはオススメではありません。

専門的ウォーミングアップ

よりその競技の特性や動きを考慮した上でのウォーミングアップということ。
野球であればキャッチボールをする。サッカーだとドリブルをする。バスケだとパス練習をする。
このように全競技共通というより、その競技で使用する道具などを使用する場合も多い。

バリスティックストレッチ

いわゆる、「反動を使って体を動かす」ということです。
リズムよく、少し弾みながら行うことが多く、サッカーでのブラジル体操などが有名ですね。
反動をつけて行うことにより、柔軟性が上がり筋力発揮能力も高められる。
ただし、反動をつけているのでケガをするリスクもある。そのため、効果としては高いがアップの序盤で取り入れることには注意したい。

このウォーミングアップの種類に関しては、別の記事で詳しくご説明いたします。

現役トレーナーからのプチアドバイス

アップの実施時間に関して

スポーツ選手がアップを実施する際の時間としては、だいたい平均して30分程度と考えるのが良いでしょう。ジムや自宅で筋トレをする場合は、10分程度ストレッチなどを行うようにしてください。
あまり長すぎても疲れるし、短すぎても体が動かない。
ただし、アップ時間をあまり長く取れない場合は、もう少し短めに行わなければいけないため、そのへんは臨機応変に対応しましょう。
試合となればもう少しイレギュラーは多く、試合時間が前倒しになったり、逆に遅れたりすることも多々ありますので、その時々に応じて時間管理をする必要があります。
季節でいえば、夏場は外気温も熱いためアップは短期集中でもいいですが、冬場は体を温めるのに時間がかかるため、少し長めにする方がいいですね。

アップの強度

アップの強度は「ややしんどめ」がいいでしょう。
特に冬場は体が温まりにくいため、心拍数を上げるような強度の内容をチョイスし、体温をしっかり上げることが重要です。
ただし、急激に最初から心拍数をあげてしまうと疲労感だけが溜まるため、あくまで徐々に強度を上げるようにしましょう。

さいごに


スポーツ選手だけでなく、筋トレなど体を動かす人は全員ウォーミングアップは必要不可欠です。ケガをしやすい人は、やはり「準備不足」「柔軟性不足」のことが多いです。実際に私がスポーツ整形外科に勤務していた経験からも、来院する人はこの傾向にあります。こういう人はだいたいアップやストレッチが嫌いです。みんな早く本題に移りたい気持ちが強いのです。アップが好きになるとまではいかなくても、ケガや効果のためにも重要性を理解して、しっかり取り組むことが重要になります。

また、身体的な効果を上げるのはアップだけではありません。「トレーニング効果を上げる原理・原則」の記事も、あわせて参考にしてみてください。

以上、みのっちくらぶでした。

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